今回のジャカルタ旅行で初めて地下鉄MRTに乗車してみました。まだ開業して間もないMRTですが、駅構内の様子や実際に乗ってみてどうだったかをレポートしたいと思います。
ジャカルタのMRTについて
ジャカルタのMRT開業の背景
日本の東京同様、インドネシアでも首都ジャカルタに人口が一極集中しており、都市圏人口はジェトロの調査によると3200万ともいわれ人口密度が世界トップクラスです。一方で他のアジアの大都市と比較すると、ジャカルタは経済発展に対してインフラ整備が追い付いていないのが現状となっています。
東京であれば鉄道や地下鉄を利用すれば、それほど不自由なく移動ができますし、車なんて必要ないとよく言われますよね。
ジャカルタにも鉄道(コミューターライン)があるのですが、その利用率は他の交通手段と比べると非常に低く、近年になってその利用率が一層下落傾向にあります。そのためジャカルタでは都心でも多くの人が車を利用して移動しており、世界でも稀なレベルで交通渋滞がひどく、大気汚染の大きな要因にもなっているのです。
こうした交通渋滞や大気汚染は社会的に大きな問題として捉えられており、国が複数のプロジェクトに並行して取り組んでいます。MRTはそのプロジェクトの一つとして、三井住友建設など日本の支援の下で2013年の着工から6年の歳月をかけて建設され、ついに2019年4月に開業したのです。
ジャカルタのMRT路線図
ジャカルタのMRTの建設はフェーズ1とフェーズ2で分けられており、4月に開業したのが路線図上で青く表示されている区間です。北の緑で表示されているSarinahからKotaの区間は2024年開業予定となっています。
ただフェーズ1の開業についても当初予定されていた2018年から1年ほど遅れたということを考慮すると、2024年開通が最短スケジュールと考え、遅れる可能性についても考慮する必要があるでしょう。
ジャカルタのMRT以外の公共交通機関との連携
緑がフェーズ1で開通したMRT、青がトランスジャカルタ、赤がコミューターラインになっています。
中心部はMRTとトランスジャカルタを併用することで、大方移動に困ることはなさそうですね。ジャカルタではMRTだけでなく、市内から郊外を結ぶLRTの建設も進んでいます。LRTについても建設が3フェーズに分けられており、フェーズ1ではCawangを基点としてCawang⇔Cibubur、Cawang⇔Bekasi Timur、Cawang⇔Dukuh Atasのルートが2019年開業を予定です。これらの建設で鉄道網が形成されることで、車依存のひどいジャカルタの交通も徐々に変化していくのではないかと思います。
私自身も昔はブルーバードタクシーをよく利用していましたが、今ではほとんどタクシーを利用することはなくなりました。ジャカルタでの移動はこうした公共交通機関を利用するとともに、配車アプリのGrabやGo-jekのバイクタクシーを活用すれば、安価で渋滞にも悩まされない賢い移動が可能になりそうです。
ジャカルタのMRTの時刻表
上り下りともに10分おきに電車が来ます。
Lebak Bulus → Bundaran HI
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Bundaran HI → Lebak Bulus
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インドネシアではSNSの利用率が非常に高く、MRTも公式のInstagramアカウントで情報発信を積極的に行っていますので興味がある方はチェックしてみてください。
ジャカルタのMRTの運賃
MRTの運賃は最長区間で14,000IDR
3,000IDRの最低運賃に、移動する駅の数に応じて1,000IDRずつ加算されていくと考えればよさそうです。現状の開通区間の最長であるLebak Bulus~Bunderan HIの移動で14,000IDRかかります。日本円に換算すると30円~140円程度で乗れることとなり、多くの人に利用してもらう目的から運賃が安価に抑えられている印象です。
Nah, ini dia yang ditunggu-tunggu, tarif @mrtjakarta! Simak infografis berikut ya untuk lengkapnya!
Jadi, siap naik Ratangga besok?#DKIJakarta#AniesBaswedan#MRTJakarta#UbahJakarta#JakartaSmartCity#JakLingko#Ratangga pic.twitter.com/mW9LzoIYRJ
— Pemprov DKI Jakarta (@DKIJakarta) 26. maaliskuuta 2019
Single-Tripは運賃に加えてデポジットが必要
MRTに乗車するためにはMulti-TripかSingle-Tripの乗車カードを券売機もしくは窓口で購入するか、銀行発行のICカードを利用します。
ただ現状ではMulti-Tripの運用はスタートしておらず、Single-Tripの乗車カードか銀行発行のICカードの利用に限られています。
Multi-Trip
有効期間が長く、キャッシュレス(電子マネーを使う)で乗車できるとのことです。インドネシア銀行と利用開始に向けた取り組みが進められています。
Single-Trip
有効期間が7日間と短く、繰り返しの利用は想定されていません。Single-Tripのカードは購入時にデポジット15,000IDRがかかるため、MRTを利用する際は合計でデポジット15,000IDR+乗車区間の運賃が必要になります。Single-Tripのカードは7日の有効期間内に駅のチケット窓口でカードの返却を行えば、15,000IDRが払い戻しされます。普通に利用していれば問題ないかと思いますが、カードが破損などしていると払い戻しをしてくれないそうなので扱いには気を付けましょう。
銀行発行のICカード
以下のICカードを利用することができます。
- e-money(Mandiri銀行)
- TapCash(BNI銀行)
- JakLingko(BNI銀行)
- Brizzi(BRI銀行)
- Flazz」(BCA銀行)
- JakCard(DKI銀行)
補足として身長90cm以下はチケット不要になります。また4月はより多くの人に利用してもらうため、運賃が半額になるプロモーションを行っておりお得に乗車することが可能になっています。
ジャカルタのMRTのWIFI環境について
現状地下でインターネットにつなげられるよう、WIFI環境を整える計画はないとのことです。そのため電車内ではWIFIにつなげることはできませんが、駅構内のお店ではWIFIを提供しているところもあるようなので、利用したい場合はそちらを利用すると良いでしょう。
ジャカルタのMRT乗車レポート
乗車区間はBendungan HilirからIstora Mandiriの1駅です。
MRTの駅の外観と駅構内の様子
駅構内は静かで清潔
まず駅の外観です。個人的にバンコクのMRTを思い出しました。
ただ大統領選で盛り上がっていた時期ではありましたが、入口でセキュリティチェックはありませんでした。(写真には警備員と思われる人が座ってはいますが、乗車客の持ち物に注意を払っている様子は全くありませんでした)ショッピングモールなどでは絶対にセキュリティチェックがあるので、なぜMRTでは行われていないのか不思議でなりません。ジャカルタはテロも少なくないですし。
エスカレーターで地下の駅構内に降りていきます。駅構内はジャカルタにいることを一瞬忘れてしまいそうになるほど静かで、地上の喧騒とのコントラストが印象的です。
Bendungan Hilirの駅にはFamily Martが入っています。駅構内にコンビニが入っているのは何かと便利でいいですね。コンビニ以外でもA&Wが入っており、ちょっとした食事をとることが可能となっています。
MRTを利用している客層
企業のオフィスが多い場所柄かは定かではありませんが、Bendungan Hilir駅を利用しているローカルは小奇麗な恰好をしている人が多い印象でした。
MRTのチケットの購入方法
券売機はタッチパネル式で、デフォルトは現地語表記ですが、Englishをタッチすることで英語表記に変更できます。路線図が表示されるので降車区間をタッチし、表示された運賃分の現金を入れて購入します。画面の表記に従い、順に操作するだけですので初めての方でも迷うことなく購入することができるはずです。
MRTのチャンネルがYoutubeにチケットの購入方法を説明する動画を上げていましたので、参考までに掲載しておきます。
ただまだ開業間もないからか、券売機の横には駅員が常に立っており購入方法を親切に教えてくれます。私も行き先を告げると駅員が代わりに画面を操作し、私は現金を入れるのみでOKでした。
チケットはカードタイプで、Suicaなどと同じように改札機にタッチして入ります。
MRTの駅のホームの様子
週末のPM2:00頃のBendungan Hilir駅は乗車客がちらほらといった状況です。
ただやってきた電車は座ることができないほど混雑しており、開業間もないものの既に市民の足として日常使いされているようです。
電車内では小さめのディスプレイがドア上に設置されていましたが、広告動画が流れることはなく電車内はローカルのおしゃべりの声だけと静かで、日本で地下鉄に乗っている時と何ら変わりはありませんでした。
ジャカルタのMRTの利用で不便に感じた点
ちょっとだけ気になった点を記載させていただきます。ジャカルタのMRT開業事態がとてつもなく素晴らしいことなので、取るに足らないことはあるのですが。。
券売機の数が少ない
乗車客の数に対して券売機の数が少なく、Bendungan Hilir駅の構内はそれほど混雑していないにも関わらず、片側に1か所しか券売機がないため5人程度並んでいました。現地の人は銀行発行のICカードを利用する人も多いでしょうし、Multi-Tripのカードの運用がスタートし普及していくことで解消されるのかもしれませんが、観光客が多いエリアだと券売機の前に長蛇の列ができるのではないかと心配になりました。
改札機の数が少ない
写真をご覧いただくと分かるように、電車から降りて駅から出ようとする人の大渋滞です。東京でもこれほどには中々なりません。もうすこし改札機の数を増やしてもらえるとスムーズな人の移動が可能になりありがたいのですが。
セキュリティチェックがない
乗車レポートでも記載しましたが、面倒くさいという意見もあるかとは思うものの、手荷物検査は行ったほうがよいと個人的には思います。
駅構内にも警備員のような人はいますが、現状テロを回避する術は十分なレベルで用意されていないように感じます。日本人会の事務所も入っていたビルの1階にあったスタバが吹っ飛ばされたテロなどが頭に浮かぶので、セキュリティ面は強化してほしいものです。
ジャカルタのMRT利用のすすめ
ジャカルタの渋滞は本当にひどく、通常であれば30分でつく所が渋滞に巻き込まれて2時間以上かかってしまったなんてことは日常茶飯事です。特に私がジャカルタに滞在していたのが大統領選真っただ中。道路はジョコウィの支持を訴える応援隊であふれ、体験したことのない程のひどい渋滞となっていたのですが、そうした状況下でMRTを利用できるようになっていたことでとても助かりました。
ジャカルタにおけるMRTの利用価値は非常に高く、駅構内や電車内は非常にきれいですので、これまで他の公共交通機関はローカル度が高めで利用を躊躇していたという方にもおすすめできます。
フェーズ2のKOTAエリアまでの開通も待ち遠しい限りですし、LRTの建設なども進んでいます。こうしたたくさんの人が利用する鉄道網が形成されることで、主要な駅周辺の開発はどんどん進んでいくでしょうし、これまでの車社会から脱した新しいジャカルタの姿が見えてくるのだと思います。そう簡単にいくとは思いませんが、もしかしたら現在のようなひどい渋滞が昔のことになるのかもしれません。今後もジャカルタには定期的に訪れると思うので、自分の目と肌でジャカルタの変化を感じていきたいです。
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